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エキシビジョン

優しいエネルギーに包まれていた漫画家「羽海野チカの世界展」

2016-09-07

 
 
 
 
 
 
前回、浦沢直樹先生の個展を見てから、漫画家さんの原稿が放つエネルギーにすっかり魅了されてしまった アテクシなのですが、先月行われた羽海野チカ先生の世界展も、とても素敵でした。

展示はタイトルに「世界展」とあるように、生原稿や原画、ネームと一緒に、先生が学生時代お金が無くて手作りしたというワンピースやお仕事道具やコレクションの数々が展示されていて、先生の創作と生命のエネルギーがビンビン伝わってくる、熱い内容でした。原画はどれも1つ1つ丁寧に心に沿って作られ、ブレていないのが伝わってきて、その紙の上に残っている、深く、真摯に向き合ったエネルギーがとても美しく、見ていてじんわり胸が温かくなり、涙が出てきそうでした。

絵達が、辿り着くべき、「終わるべき点」に到達していて、しっかり、絵の中にエネルギーが保存されているのがとても印象的でした。「終わりを知っている」絵の中のエネルギー、という点において、それは、パウル・クレーの絵に納められたエネルギーと、何だか似ているものを個人的には感じました。

また、この展示で強烈に残っている、特別印象的だったことは、来場されていたお客さんがつくり出していた、空間のエネルギーでした。これまで沢山の展示に行ってきましたが、こんなに優しく、柔らかいエネルギーに満ち満ちた空間は、味わった事がありませんでした。スタッフさんから「閲覧順は決まっていませんのでご自由にどうぞ」と促されても、混雑した狭い会場の中、自然と、壁を沿う形で、一人一人が絵と対峙出来る様に、ゆっくり列ができているのです。限られた空間の中でも、1人1人が、先生の作品とプライベートな空間で味わえる様な、不思議な、静けさを許された、展示空間でした。空間に漂う、想念や、感情、思考、お客さん達の心が震えている音は、控え目に、静かに、しかし深く、熱く、まるで命の源に、触れているような音でした。先生の漫画の向こう側には、こんな読者さん達が繋がっているのかと、何か、とても熱くこみ上げてくるものがありました。

展示を見た後、懐かしくなったアテクシは 、まずは「ハチミツとクローバー 」を、そのあと、初めて「3月のライオン」を全巻大人買いしてしまいました(笑)

 

 

ハチクロは完結してから、もう10年も経つ作品なのですね‥時間の流れの早さに、冷や汗が‥(遠い目)読んだ当時に感じたことや、考えたことは、時間が経ってから読み直してみると、受け取れるものの種類が変わっていて、大人になった今だからこそ、改めてハチクロが持つ、純粋な生のエネルギーが、とても貴重なものに、感じられました。「ハチミツとクローバー 」では、それぞれの道を見つけるまでの、キャラクター達の心の葛藤や心の交流等が描かれていましたが、「3月のライオン」では、既に道を選択した後の葛藤や責任、決意などが、時間をかけて、豊かに描かれています。
 

”「3月のライオン」は、零くんが自己肯定できるまでの話なんですよ。その自己肯定がてきた時に、零くんがどんな表情をしているかは、私の人生にかかってる(笑)私自身が実感を持って自己肯定できていないと、零くんも実感を持って自己肯定はできない。本心じゃなくて、強がりになっちゃうというか。だから、私が幸せにならないと、登場人物の誰も幸せになれないんですよ。”羽海野チカ ダ・ヴィンチ 2011年 09月号より 

 

羽海野チカ先生の作品は、”生きる”というテーマが、すごく ”生活” に根ざして描かれているのが、とても印象的です。特に「食べる」ということは、本当に美味しそうに描かれている(笑)(西武池袋本店では、こんなコラボが‥!)私達が皆等しく、日々繰り返し行っている「食べる」という行為を、人と人の関わり合いの間に豊かに描いていて、とてもとても、温かく、優しい気持ちにさせてくれます。

誰もが持っているであろう、さまざまな種類の「孤独」に光りを当てながら、それでも、人と関わり合うことの可能性を、様々な方向から描いている、とても優しく、時に心がヒリっとするくらい、まっすぐ真剣に”生きること”に向かい合っている世界が、そこにはあります。

 

“私も子どもの頃、友達とすべきだった会話や遊びの時間を全部、絵を描くことと物語を読むことに費やしたので。全部投げうって、そこで成熟させたものを無駄じゃなかったんだっていう物語しないといけないんです、私は自分の人生を。あの子ども時代に意味を持たせるには、漫画家としてちゃんと成功するしかなかった。今も負けたくないなぁと思って、それこそ片眉剃り落とす勢いのファイティングポーズで書いてます”

羽海野チカ ダ・ヴィンチ 2011年 09月号より 

 

「3月のライオン」11巻のラストに載っていた、主人公零くんの幼少期から現在に至るまでを振り返った「ファイター」が、個人的にとても好きでした。

 

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自分の居場所を求め、将棋を指し続けてきた主人公の零くんの、美しい絵とともに綴られたモノローグが、とても温かく、羽海野チカ先生も、そんな風に感じながら、漫画を描いているのかしら‥と、想像しています。

 
” 僕が変わった訳では無いーーーそして

周りが

変わってくれた訳でもない

ただ

気が遠くなりそうな

日々を必死で

指して 指して

ただ 指し続けているうちに

ある日ふと

同じ光の射す方向へ向かう人達と

一緒に旅をしていることに気付いた

そして 今日も

目の前に座る人がいて

またひとつ新しい物語が始まる

光の射す方へ

僕らの旅は続くのだ”

 

私もこの光の射す方へ向かってゆきたい、

読みながら、(勝手ながら)そう思ったのでありまする〜