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映画

人を「信じる」と「信じない」の間にあるもの
映画「怒り」

2018-06-29

 

決して明るくないストーリーなのははじめから分かっていたのですが、どうしても気になってついに観てしまいました、映画「怒り」!とても映画らしい映画で、作品としてしっかりと昇華されていたので、私は変に感情移入したりズルズル引きずることもなく、サラリと味わうことができました。

 

 

東京、千葉、沖縄の3つの土地を舞台に、未解決の殺人事件の容疑者と目される3人の男と周囲の人々の関係を通して、さまざまな問題があぶり出されてゆくヒューマンミステリー映画。

もー、とにかく出演者が豪華すぎです!もちろん皆さん日本を代表する俳優さんなので演技は言うまでもなく上手なのですが、本当に配役が絶妙。もしかしたら過去世で皆さんこんな関係性を生きていたんじゃないかと、勝手に妄想してしまうほど、役柄がしっくり馴染んでいました。そして、ささいな小物やキャラクター設定が、それぞれの俳優さんの魅力を引き出していました。

 

 

宮崎あおいさんの演技が、本当に印象的でした。どうしてもこれまでの役柄から、清純派なイメージがつきまとう宮崎さんに、まさかまさかの「家出をして風俗で働いていた」という設定を持ってきたところからして、えぇー!と個人的にはまずビックリだったのですが、あの愛子役をあんな風に演じられるのは、やっぱりどう考えても宮崎あおいさんしかいないなぁ‥と感じられる程、彼女の何気ない表情や仕草が役にとても馴染んでいました。しみじみと彼女の演技力の奥深さに感動してしまいました。そして、いつまでも可愛いです‥!

 

特にこのシーンは鳥肌もの‥!

 

愛子の父親役には、世界の渡辺謙さん。娘を想う複雑な心理をとっても優しい視点で演じていました。顔もどことなく、宮崎おあいさんと似てますし、親子という設定も違和感ありません(笑)インタビューによれば、ちょうどこの撮影中、実の娘である杏さんの結婚式があったそうで、役と実生活の感情がオーバラップしていたとのこと‥!

 

感情を見せない謎めいた役が、時に不気味でもあり、しかしその役が内包している寂しさを繊細なしぐさや声、セリフで表現していた松山ケンイチさん。さすがに上手いです〜!

 

文句無しの演技力で、最初から最後まで魅せてくれた森山未來さん!終始、いや〜さすが森山さん!と、うなって見入ってしまいました。この役のために撮影前、舞台となる無人島で実際に1人で生活をして、役作りをされたとのこと。気合いが違います‥!!

 

綾野剛さんと妻夫木聡さんが演じられたゲイカップルも、ラブシーンが綺麗で切なくて、なんともいえない空気感が2人の間に漂っていました。それもそのはず、この役のために2週間共同生活をしていたとのこと。この映画にかける意気込みが、皆さん違います‥!あの2人の間の空気感は、そんな舞台裏での生活が支えていたのですね。妻夫木さん演じる役が、些細なことで焼きもちをやいてしまうところや、不安や恐れによって、「信じる」「信じない」の間を揺れ動く様は、個人的には一番共感する部分が多かったです。

 

「一体広瀬すずちゃんに何させるの〜監督〜!」(涙)と、個人的には宮崎あおいさんの配役と似た、なんとも言えない感覚があったのですが、見終わってみればそこは深く深く納得してしまう、絶妙な配役だったことに気付かされました。すずちゃんの役は、すべての登場人物や私たち鑑賞者の誰もが、最初は彼女のような純粋に人を信じる存在であったのだという、シンボルのようにも感じられました。

 

嬉しかったのは、脇役としてですが高畑 充希さんや池脇千鶴さんも出演していたこと。この辺もあらゆる面のクウォリティーに手を抜かない、制作者側の本作への愛が感じられました。

 

そんな名だたる名優たちの中でただ一人、本作で映画デビューをしたという佐久本宝さんの存在が、とても良いバランスをこの映画にもたらしてくれていた気がしました。彼の役柄は、この映画のテーマである「怒り」が、一体どこからくるのか、それをとても分かりやすい形で体現していた、とても重要なキャラクターだったと思います。新人賞も受賞して、これからが楽しみな俳優さんです!

 

 

緻密に練られたストーリー構成は本当にさすがで、伏線を辿りながら、誰が犯人なのだろう?とキャラクター達とともにミステリーを追うところは、とてもハラハラしてしまいます。

ただ、主役を演じられる程のパワフルなエネルギーの持ち主である名俳優たちが、あれほど一同に介して演じている世界は、ちょっと私には豪華すぎてしまい、そこに現実味はあまり感じられませんでした。でもだからこそ、実際の生活と混同せずに、この映画を純粋に1つの完成度の高い芸術作品として安心して楽しめ、そこに描かれている普遍的なメッセージ性をしみじみ味わうことができたのだろうと思います。この作品が持つ絶妙な「鑑賞者との距離感」も、個人的にとても気に入っている点で、李監督の手腕を感じました。

 

 

李監督はインタビューでこんな風に語っていました。

「怒り」って、表面的には激しい感情のように見えますけど、その裏側には恐れや不安がある。そういうものが増幅されて、怒りとして出てくるわけで、怒っている人たちがみんな自信満々で怒っているわけではなく、裏を返せば何かをすごく恐れている。そういうことを感じました。

 

人が怒りを抱いたり、人を疑い「信じられない」時、そこにはかつて「信じていた」人に期待を裏切られたり、傷ついた経験の記憶が隠れているのだろうと思います。そんな風に考えてみると、自分自身を含めて、周囲の様々な人達の心の動きを、もう少し優しく感じとることができる気がします。

見終わった後、古い傷が新たな傷を生み出し続けている連鎖は、やはり、人を「信じること」を選ぶことでしか、止められないのかもしれないなぁ、と感じました。それが恐らく、1人1人の幸せにも、繋がっていくのかもしれません。果たして自分は、裏切られても、傷ついても、失っても、それでもまた人を「信じること」ができるのだろうか、できるようになれたらいいな。そんなことを考えた作品でした。

 

 

 

怒り
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