「夫を、元妻に戻す計画を立てる‥」という一見突拍子もないストーリーが面白そうで、公開当初観に行きたいなぁと思いつつも逃していた、映画「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」。今回オンラインでやっと観れたのですが、ストーリーも、美術セットやファッションも、音楽も、隅々まで美しく整っていて、終始映画全体には明るいムードが流れていました。
社会人になってから半年以上男性とつき合ったことのない主人公マギーは、MBAもMAも持つ30代の女性。そろそろ母親になりたいけれど、これから先自分が半年以上誰かと関係を続けられるとはどうしても思えず、「現実的な選択肢」として、優秀な元同級生ガイの精子を使った体外受精を計画します。
そんな中マギーは、勤め先のNY大学で新進気鋭の文化人類学者ジョンとひょんなことから出会うことに。マギーがアートとビジネスを繋ぐアーティスト・コーディネーターとして働いていることを知ったジョンは、自分が長年温めていた小説家になるという夢を打ち明け、2人の距離は次第に縮まってゆきます。
既婚者だったジョンは、キャリア優先で自分のことを顧みてくれない妻との関係に終止符を打ち、マギーと再婚するのだが‥‥。
なんといってもマギー役のグレタ・ガーウィグ!とにかく彼女の類希なる演技力と華やかな存在感が、この映画をとても素敵なものにしていました。間の取り方やセリフまわし、身体の動きや表情の作り方、そして何より声の出し方。そのどれもがとても独特で魅力的で、自然体の彼女の演技ひとつひとつに引き込まれてしまいました。
どこかで観たことがあるなぁと思ったら、なんと映画「21センチュリー・ウーマン」で際立っていた赤髪アビー役も演じていたグレタさん!(21センチュリー・ウーマンの感想はコチラ)
そんなゲルタが演じている、学歴的には優秀で、本人も至って真剣に生きているのに、どこかトボけていて愛嬌のあるマギーというキャラクターは、観ている者を終始明るい気持ちにさせてくれます。それはきっと、監督がインタビューでも語っていましたが、このマギーが行動する動機はいつも「罪悪感」からではないからなのだろうと思います。
本作でジョン演じるのは、イーサン・ホーク!「今を生きる」や「ビフォア・サンライズ」シリーズ3部作、「ガタカ」など、これまで彼が出演した色んな作品を観てきましたが、今回の「女殺し」の異名を持つジョンという役は、イーサンの王道のイメージにピッタリ。ハマリっぷりがハンパじゃありません‥!
イーサンの甘〜い感じやナイーブな感じ、ちょっと頼りない感じは相変わらず顕在なのですが、加齢による、哀愁や幼児返り的な要素もプラスされ、若い頃とは別の形で母性本能をくすぐる独特の周波数を放っていました。
この疲れた感じ!(笑)
俳優業を優先するためドロップアウトしているとはいえ、自身もかつてはNY大学の学生だったイーサンは、こういうインテリ役がよ〜く似合います。いやぁ〜息の長い俳優さんです!
そんなジョンの奥さんジョーゼット役には、ベテラン女優ジュリアン・ムーア様。本作が撮影された頃は54歳だったなんて‥!
確かに年相応のシワもシミもしっかりと映っているのですが、それさえもとてもチャーミングにしてしまう、ジュリアン姐様。彼女が本作で着こなしていたファッションもとっても可愛いかったです。
まぁ、ちょっと丈が短すぎる時もありますが(笑)
こちらのサイトに本作のキャラクター達のファッションについて詳しく触れられていたのですが、とても面白かったです。特にジョンのTシャツについての情報は、興味津々!
そんなジョン&ジョーゼットの2人のこどもたちのキャラクターも最高でした。度々、親の勝手な事情に振り回される憤りを随所随所シニカルに表現していて、ストーリーをいい具合にピリっと引き締めていました。特に姉弟で内緒話をするシーンが何度かあるのですが、その方法が賢い!とても面白かったです(笑)
マギーの子どもリリーもとっても可愛い!姉妹のように仲がよい姿は、どのシーンもホッコリさせられます。
本作の全体を通して流れている小気味いい雰囲気が、とても心地よく感じられるのは、レベッカ・ミラー監督が自分と同じ女性だからでしょうか。男性の描き方にしても、女性の描き方にしても、劇中に出て来る会話ひとつひとつをとっても、痛快さとウィットに富んでいて、思わず「うまい!」とうなってしまう場面の多いこと!
例えば、マギーと娘リリーが一緒にお風呂でシャボン玉をするこの可愛らしいシーンの中では、さりげなく、皆1人1人それぞれ別の人生を生きている、ということが示唆されていたり。
マギーの元カレであり現在親友でもあるトニーが、マギーに言ったこんな台詞も印象的。
”愛は理屈じゃない ムダなことばかりさ
とっ散らかってて当然なんだ
君はキレイに道徳的に事を納めたがる”
体外受精をしてシングルマザーになろうと決意した時も、既婚者のジョンと恋に落ちて結婚した時も、結婚後に自分の仕事よりも夫ジョンの創作活動を優先させて、まるで乳母の様に世話をし続けた時も、どんなに忙しくても夫と元妻の2人の子どもたちの世話を続けた時も、そして再婚後に夫ジョンを元妻ジョーゼットに返そうとした時も、マギーを動かしていたのは、彼女の中にある「正しくありたい」という気持ち。
これは勿論あくまで彼女基準の「正しさ」ですが、このマギーの中にある「正しさ」が、物事をコントロールしようとし、余計に色んなことが複雑になってしまいます。そして結果的には、彼女自身をも苦しめてしまうことに。
物語の最後はスッキリとまとまり、鏤められていた伏線が思わぬ所でつながる楽しさも用意されていました。
自分の中にある「正しさ」で、自分や他人の人生を無理矢理コントロールすることを手放したとき、「運命」が再び動き出す。
”なるように、なる”
そんな明るいメッセージが響く、素敵な作品でした。
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監督や出演者たちのこちらのインタビューも面白かったです!