こんな映画がまさか実現するなんて!
あのゴッホの名画のタッチで表現された油絵が動く様子を観た時、そのあまりの美しさと贅沢さと、大好きな名画の世界の中へと入れる喜びとで、私は胸がいっぱいになってしまいました。
このプロジェクトの制作裏側もとてもとても、興味深いです。
まずゴッホの名画に描かれている人物に似た俳優が選ばれ、似た様な世界観を実際にセットで作り撮影。
その後、撮影された映像をキャンパスへ映写し、それを、この映画の為に世界中から集められた画家125名が、ゴッホ風の筆のタッチで描く。
本編の1秒に対して12枚の油絵を描いたものを、高画質の写真で撮影して繋げたものが、この映画だそうです。その数62450枚にも及ぶそう‥。なんとも贅沢で気の遠くなる作業です!
日本人画家の古賀陽子さんも唯一の日本人として参加。インタビューはコチラ
無気力な日々を過ごしていた青年アルマン・ルーラン(ダグラス・ブース)は、郵便配達人の父、ジョゼフ・ルーラン(クリス・オダウド)から1通の手紙を託される。それは、父の親しい友人で、1年ほど前に自殺したオランダ人画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(ロベルト・グラチーク)が弟・テオに宛てて書いたまま出し忘れていたもの。パリに住んでいるはずのテオを探し出して、手紙を届けてやってほしいという。(オフィシャルHPより)
物語は青年アルマンが、最後のゴッホの手紙を弟テオへ届ける旅に出るのですが、途中でゴッホを知る人々と出会いながら、彼の謎の死に隠されていた真実へと近づいてゆく‥
自らの耳を切り落としたり、精神的に病み、最後は銃で自殺をした、というのが一般的なゴッホの死について知られている内容でした。しかしこの映画では、時間が経ち、浮かび上がって来た、彼の不可思議な死の謎に迫ります。ゴッホの筆のタッチで描かれる、ゴッホの死の謎‥。なんとも贅沢な企画です。
そのストーリーもさることながら、この映画の企画、そして、世界中から集まった画家たちによる、気の遠くなる様な作業の積み重ね、その全てが、ゴッホへの愛で溢れています。
彼の死の真相に、本当の意味で触れられたかどうかはさておき、ゴッホが残した数々の名画からこれまで受け取っていた沢山の愛に対する敬意、そして制作に関わった者たちからゴッホへの愛のお返事のような、そんな時空を超えたコミュニケーションのような、素敵な作品でした。
ゴッホが好きな人もそうでない人も、デジタル技術とアナログの美しいハーモニーに、是非大きなスクリーンで酔いしれて欲しいと思います。