ドキュメンタリー

人生で一度は食べてみたい!
ドキュメンタリー「ノーマ、世界を変える料理」

2017-09-21

世界NO1レストランの座を、何度も獲得しているデンマークにある有名レストラン「ノーマ noma」。予約は半年先までいっぱいだそうで、ここで出される料理を食べる為に、世界中の美食家たちがわざわざデンマークまでやって来る、というデンマークの観光産業にも大きな影響を及ぼしたお店だそうです。

 

 

北欧で育った季節の素材を使った独創的な北欧料理たちは、時間と空間を表現した、まるでアート。

 

 

映画のレビューには「びっくりするくらい、食欲がわかない映画」という風に書かれてる人もいました。確かに「わ〜美味しそう!(よだれ)」、とはなりません(笑)普段「美味しそう!」と、料理の写真や映像を見て思うとき、これまでの経験値から大体の味の想像がつきますが、ノーマの料理は全くの未知。「え、それって、一体どんな味がするの?!」と、頭も舌も「???」の連続。

 

 

 

まずこれを見てビックリしたのが、オーナーシェフのレネ・レゼピがデンマーク人ではなく、移民マダガスカル人だったということ。過去にあったという人種差別や批判に対して、「今は全く気にしていないよ」とは言いつつも顔が曇ってしまう様子から、過去に受けて来た傷の深さが伺えました。そしてそれが反骨精神となって、成功へのエネルギーにもなっていたのかな、とも感じました。

 

 

ミシュランの★の数についても、世界ランキングの順位にしても、しっかりとライバルたちとのレースで闘いながらも、それが目的ではないと、自分自身にも言い聞かせているレネ。世界ランキングも、「世界一のレストランなんて存在しない、それはまるで、今年の一番の色は?黄色です!、と選ぶ様なものだ」としつつも、「それでも、それによって自分の人生は変わった」と、そのランキングが持つ可能性についても冷静に眺めるレネ。独自の創造性を磨く事に日々集中し続ける情熱、そして世界に自分の信じる美しさや価値を示したい、という情熱。職人と経営者という、彼の中にある豊かな才能を持った2つの顔が、巨大なエネルギーを抱えながら、必死にバランスを取ろうとしている様子が、とても印象的でした。

 

 

彼の描くヴィジョンは大きさく、まだまだ見えていない部分も沢山ありそうです。今年12月(2017年)でノーマは一旦閉店し、自給自足の食材を使ったレストランに生まれ変わるとの事。その移転地であるクリスチャニア地区については、このドキュメンタリー映画の中でもチラっと出て来て、レネが温室を作る構想について語っていました。新レストランのコンセプトは「Farm to Folk(農場からフォークへ)だそうです。

 

これまでの彼の活動が「私たちは何処にいるのか?(空間的にも時間的にも)」という問いを、美しい料理たちとともに私たちへ投げかけて来たとしたら、次のコンセプトは、「私たちに何が出来るのか?」ということを提案しているように感じられます。彼の活動は、お皿の上の美しい創作料理のみに留まらず、私たちが暮らしている環境、季節や風土、食と人との関わり方、そして人の生き方さえも変えようとしている、壮大なアートであり革命であるように感じられます。

 

 

 

「食を通して私たちは世界を取り込んでいる」という彼の言葉に、彼の活動のすべてが集約されているように感じられました。常に挑戦し続けるレネの生い立ちや、生身の人間としての姿が垣間みれる本作は、私にとって、彼の哲学が凝縮された料理を「いつか味わってみたい!」と思わずにはいられない作品でした。本編の最後に、原題にある「Perfect Storm」の意味が明かされるのですが、レネのノーマにおける人生にピッタリの表現でした。 ノーマの料理のように、全編美しい映像で綴られているところも、このドキュメンタリー作品のオススメポイントです。

 

 

 

ノーマ、世界を変える料理(字幕版)
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