ドラマ

誰も誰かを罰さない・永遠の名作ドラマ「すいか」

2015-10-20

 

2003年に日テレで放送されたドラマ「すいか」。もう12年前の作品になるんですね!

実はリアルタイムで何話か見かけただけで、これまで全部は通して見た事は無かったのですが、”面白かった”という印象だけがず〜っと心の中に残っている不思議な作品でした。今回とても久しぶりに全話を見る機会があったのですが、こんなに愛の詰まった優しいお話だったのね‥!とてもとても面白かったです。今見ても全然古くささを感じないのは、きっと人生の根源的なテーマを丁寧に扱っているからなのでしょうね。

 

3億円横領して逃げ回ってる馬場ちゃん(小泉今日子)の心情も

双子のお姉ちゃんを亡くした売れないエロ漫画家の絆ちゃん(ともさかりえ)の苦悩も

主人公の基子(小林聡美)とお母さんの奇妙な関係や人生への憤りも

教授(浅丘ルリ子)の曲げられない強さと優しさも

ゆかちゃん(市川実日子)のゆるーくてマイペースなキャラクターの貴重さも

当時の人生経験が浅かった私は全然分かっておらず、改めて今回見てハっと気付かされる事がいっぱいありました。

 

ともさかりえさんが以前どこかで、この作品が本当に好きで、なかなかこういう作品は役者としても出会えない、という様な内容が書かれていたのが印象深かったです。割り切れない矛盾した気持ちや、目には見えないけれど人と人の間にある漂っている愛や優しさのかたち、不器用だけど人間臭いそれぞれのキャラクターの様子がハートをそっと柔らかくしてくれました。

特に人生のセンパイである浅丘ルリ子さんが演じる教授は、全話を通じてとてもまっすぐに言葉を言うので(そして喧嘩っぱやい•笑)とても素敵です。特に好きなのは第一話に出て来る、エロ漫画家の絆ちゃんの所持金が実は83円で、一体どうやって暮らしてるんでしょうねー??と下宿屋の娘ゆかちゃんが明るくケロっと、基子と教授の前で話しているシーン。銀行口座に蓄えもなく、家賃や食費を滞納してる絆ちゃんの生活の様子を知った基子が、少し困惑しながら黙っていると、隣に座っていた教授が言います。

 

教授「あなた、この世にそんな女がいるとは信じられないって思いましたね、今?」

基子「‥‥はい」

教授は首を振りながら

教授「それは違います。色々いていいんです」

基子は少しびっくりした様子で、沈黙した後

基子「‥‥‥私みたいなもんも、いていんですかね‥?」

思わずこぼれた基子の言葉に対して、教授は迷わず

教授「いてよし」

 

言葉にするとちょっと陳腐になってしまうシーンなのですが、ドラマの根底に流れている、生を肯定したメッセージがストレートに表現されているシーンでした。きっと年をとった後に観たら、この教授が見てる景色を、また別の角度から味わえるのかもしれません。これからの人生のどこかでまた必ず観たくなるであろう、とてもとても味わい深い作品でした。

 

 

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